(2025.8.13)
この本はこんな方におすすめ
・イギリス文学ひいては文学史に残る傑作「嵐が丘」を簡易版の洋書で読みたい方。
・Oxford Bookworms Library版のレベル5で、TOEICスコア785点程度の難易度です。
※この記事には一部ネタバレの情報も含んでおりますのでご注意下さい。
記事の概要
・イギリス文学史に残る傑作「嵐が丘」(Wuthering Heights)をグレイデッド・リーダーズ版(Oxford Bookworms Library)の洋書で読みました。
・本の概要、登場人物、年表型あらすじ、洋書の難易度などをまとめます。
・実際の書籍から英文を引用・和訳します。
・時系列順に並べ直した年表型あらすじを作成しましたのでご参考になれば幸いです。
1.はじめに
イギリスの女流作家Emily Brontëによる生涯唯一の傑作悲劇「嵐が丘」(1847年)をOxford Bookworms Library版で読みました。世界の三大悲劇、世界の十大小説のひとつと評され、文学史に残る最高傑作扱いされています。
この記事では、本の概要、登場人物、ネタバレ含む年表型あらすじ、Oxford版洋書の難易度などをまとめます。時世が入り組んで難解な本作ですが、それを年次順に直してあらすじを作成しましたのでご参考になれば幸甚です。ネタバレも含むのでご注意下さい。また、実際の書籍から英文を一部引用・和訳しますので、少しだけ雰囲気を味わって頂けます。
「嵐が丘」というタイトルだけは誰もが聞いた事があると思います。原作洋書を読むのは敷居が高く中々腰が上がらないので、Graded Readers版の読みやすい英語で名作を読むのはおすすめです。
洋書読了📚
Wuthering Heights
Level 5 Oxford Bookworms Library
ページ数:122世界の三大悲劇であり世界の十大小説とされるイギリス文学の傑作「嵐が丘」をOxford版で読みました。
Graded Readersとは言え読み応えがあり、本作が気になっている方には非常におすすめ😀https://t.co/ChyKh1lYjt pic.twitter.com/pKDqvrpCPs— みっちー@英語学習ブロガー (@michi1009_t) August 12, 2025
・オックスフォードブックワームとは~Oxford Bookworms Library
イギリスのオックスフォード大学の出版局、Oxford University Pressが出しているオックスフォードブックワーム(Oxford Bookworms Library)のシリーズは、英語学習者がレベルに合わせて本を選べる様に編纂されたシリーズです。ブックワームなので、「本の虫」という意味です。ボキャブラリーや本の長さ、文法レベル等に応じてレベル分けされており、英語学習者からの高い評価を得ております。今回読んだ「嵐が丘」はOxford Bookworms Libraryのレベル5の分類で、シリーズの中では難易度高めです。この様な古典の名作を平易な英語で、サクッと読めるボリューム感なのでとてもおすすめです。
→Oxford Bookworms Libraryに関する、オックスフォード大学出版の日本語公式サイトはこちらをクリック
2.本の概要|Wuthering Heights Level 5 Oxford Bookworms Library

題名 | Wuthering Heights Level 5 Oxford Bookworms Library |
著者 編纂 | Clare West イラスト:Jeff Spokes |
オリジナル版 | Emily Brontë, Wuthering Heights (1847年) |
ジャンル | 悲劇、ゴシック小説 |
出版社 | Oxford University Press |
出版年 | 2012年 |
ページ数 | 122ページ |
単語数 | 23,180語 |
参考:Wikipedia「嵐が丘」
・登場人物まとめ
この章ではOxford版Wuthering Heightsの主要登場人物をまとめます。「嵐が丘」は登場人物が多く、名前が被っている人もいて難解になっています。この物語の舞台はイギリスの片田舎にある、Thrushcross Grange(鶫(つぐみ)の辻)と、Wuthering Heights(嵐が丘)という2つのお屋敷です。そこで繰り広げられるドロドロとした人間模様が物語の根幹です。物語は親子3代に及び複雑で難解ですが、こちらの情報が読解の一助になれば幸いです。
Wuthering Heights(嵐が丘)のアーンショウ家(The Earnshaws)
・Mr. Earnshaw:アーンショウ家の主。
・Hindley Earnshaw:長男ヒンドリー。ヒースクリフをいじめる。
・Catherine Earnshaw:長女キャサリン。ヒースクリフと心を通わせる。
・Heathcliff:ヒースクリフ。Mr. Earnshawが連れ帰ってきた出自不明の拾い子。ジプシー。彼の復讐劇がこの物語の根幹となる。ここまで枠で囲う。
・Hareton Earnshaw:ヘアトン。ヒンドリーがFrancesと結婚して生まれた息子。
・Joseph:召使い。
・Zillah:お手伝いさん。
・Ellen Dean:エレン。お手伝いさん。この物語の語り手。
・Mr. Lockwood:近くのThrushcross Grangeに引っ越してきた。エレンから嵐が丘の話を聞く。
Thrushcross Grange(鶫(つぐみ)の辻)のリントン家(The Lintons)
・Mr and Mrs Linton:リントン夫妻
・Edgar Linton:エドガー。息子。嵐が丘のキャサリンと結婚する。
・Isabella Linton:イザベラ。娘。ヒースクリフと結婚するも、上手くいかない。
・Cathy:キャシー。エドガーとキャサリンの娘。
・Linton Heathcliff:リントン。イザベラとヒースクリフの息子。嵐が丘のヒースクリフに引き取られる。
・年表型あらすじ(ネタバレあり)
この章ではWuthering Heightsの物語の中で起きる出来事を年代順に並び変えて表にします。作品では年次が前後して難解になっていますので、難しいと感じる方にはこの表が役立つと思います。ネタバレを含みますのでご注意ください。見たい方は以下のバーをクリックしてご確認下さい。
1770年 アーンショウ家。幼少のヒンドリーとキャサリンは仲良くしていたが、父が連れ帰って来たヒースクリフが家に来てから兄弟仲が悪くなる。キャサリンとヒースクリフは心を通わす。
1775年 ヒンドリーがフランセスと結婚。キャサリンは鶫の辻のエドガーと知り合う。ヒースクリフは段々孤立する。
1778年 ヒンドリーの息子 ヘアトン・アーンショウ誕生。フランセス亡くなる。
1778~79年 ヒースクリフの心が荒み、逃亡する。
1783年 キャサリンとエドガーは結婚。
ヒースクリフが裕福になって嵐が丘に帰還する。
ヒースクリフはキャサリンの所に頻繁に通う。ヒンドリーの財産は段々奪われていく。
1784年 キャサリンが娘のキャシーを産み、すぐに病死。
ヒンドリーもその後亡くなる。ヒースクリフがアーンショウ家の財産を全て強奪する。
ヒースクリフとイザベラが結婚したが、暴力によりイザベラ逃亡。逃亡先のロンドンで男の子のリントンを出産。
1797年 キャシーは嵐が丘との接点なく成長。
イザベラが亡くなり、息子のリントンを鶫の辻で一旦引き取ったが、聞きつけた実父ヒースクリフに奪われ、リントンは嵐が丘へ。
1800年 キャシーが散歩中にヒースクリフとヘアトンに出会ってしまう。
嵐が丘を訪問し、キャシーとリントンが仲良くなる。
1800~1801年 エドガーが亡くなる。病弱なリントンとキャシーは、ヒースクリフの策略と暴力によって強引に結婚させられる。
リントン病死。これにより鶫の辻のリントン家の財産もヒースクリフのものになった。
1801年 ロックウッドが鶫の辻に越してくる。オーナーのヒースクリフに会いに嵐が丘まで出かけるがひどい出迎えを受ける。故キャサリンの亡霊を見て不穏に思い、嵐が丘の過去の話をエレンに聞く。
1801~1802年 全てを手に入れたヒースクリフは急に激しい虚無感に襲われ、眠れず食事も喉を通らなくなり亡くなっていく。
1802年 ロックウッドが再度嵐が丘を訪問すると、ヘアトンとキャシーが明るくなり、良い仲になっていた。近々結婚し、鶫の辻に戻る計画を立てている。
・洋書の難易度
今回読んだ「嵐が丘」(Wuthering Heights)は、Oxford Bookworms Library版のレベル5で、英検準1級、TOEICスコアで言うと785点程度の英語難易度です。Graded Readers版とは言え、100ページ以上ありしっかりとした読み応えがありました。
イギリス文学ひいては文学史に残る傑作ですので、誰もがタイトルは耳にした事があると思います。そんな有名な作品が気になっている方で、簡易な英語で読みたい方におすすめの一冊です。
・本の感想~英語多読でのおすすめ度は星3/5つ中
Oxford Bookworms Library版の「嵐が丘」(Wuthering Heights)の英語多読教材としてのおすすめ度は星3つ(5点満点中)です。
文学史に残る傑作を読めた満足感の一方、登場人物に感情移入はできない作品でした。ヒースクリフが何を考えてどうしてあんなに暴力的なのか、良く分かりませんでした。また、キャサリンがヒースクリフを気に入っている理由も不明で、個人的には楽しめませんでした。
原作では登場人物の名前(リントンやキャサリン)が被っていて大分読みづらいらしいのですが、このOxford版では分かりやすくする配慮が感じられ、好感が持てました(例:2代目のCatherineをCathyとされており分かりやすかった。ヒースクリフの息子のリントンも、リントン家の方と混乱する事はなかった)。
悲劇と言うジャンル自体が自分の好みに合わなかったですが、それが合う方や、名作をとりあえず読んでおきたい方には良いと思います。
3.書籍から英文引用・和訳|Wuthering Heights Level 5 Oxford Bookworms Library
この章ではOxford編纂版の「嵐が丘」(Wuthering Heights)から、実際の英文を抜粋・和訳します。名作の雰囲気を少しだけ感じて頂き、興味が持てたら実際に本を手に取って頂ければと思います。
📝ロックウッド氏が嵐が丘を訪ねる
And it seemed that Mr Heathcliff hardly ever received guests. His house is called Wuthering Heights. The name means ‘a windswept house on a hill’, and it is a very good description.
Brontë, Emily. Wuthering Heights Level 5 Oxford Bookworms Library (English Edition) (p.9). Oxford University Press. Kindle 版.
そしてヒースクリフ氏がめったにゲストを招かないのだろうと察した。彼の家は嵐が丘と呼ばれている。その名前は「風が吹きすさぶ丘の上の家」という意味で、ピッタリだと思う。
📝お手伝いさんのエレン・ディーンの語りが始まる
WHEN I WAS a child, I was always at Wuthering Heights, because my mother was a servant with the Earnshaw family. They are a very old family who have lived in that house for centuries, as you can see from their name on the stone over the front door.
Brontë, Emily. Wuthering Heights Level 5 Oxford Bookworms Library (English Edition) (p.19). Oxford University Press. Kindle 版.
子供だった時、私はいつも嵐が丘にいたわ。私の母がアーンショウ家の召使いだったからね。あなたが正門の石に刻まれた名前を見た様に、アーンショウはとても古い家でその家に何世紀も住んでいたわ。
📝Mr. Earnshawが連れ帰ってきた子供のヒースクリフ
Catherine and Hindley were expecting presents, and they rushed eagerly to see what it was. They were very disappointed to see only a dirty, black-haired gipsy child.
Brontë, Emily. Wuthering Heights Level 5 Oxford Bookworms Library (English Edition) (p.19). Oxford University Press. Kindle 版.
キャサリンとヒンドリーはプレゼントを期待して、それが何なのか走って見に来たわ。彼らは薄汚れた黒髪のジプシーの子供を見てガッカリしていたわ。
※語りのパートでの“I”は基本的に全てエレン・ディーンの事です。
📝ヒンドリーにいじめられ、復讐心を燃やすヒースクリフ
‘I’ve got to think how I can have my revenge on Hindley. I only hope he doesn’t die first! He’ll be sorry he’s treated me like this, Ellen!’
Brontë, Emily. Wuthering Heights Level 5 Oxford Bookworms Library (English Edition) (p.28). Oxford University Press. Kindle 版.
「ヒンドリーにどの様にリベンジ出来るか考える様になった。彼が先に死なない事だけを祈る!あいつ(ヒンドリー)が俺にしたこんな仕打ちを後悔させてやるよ、エレン!」
📝4年間姿をくらませていたヒースクリフの帰還
‘Don’t you know me?’ he asked. ‘Look, I’m not a stranger!’ ‘What!’ I cried in surprise, for it had been four years since he disappeared. ‘Heathcliff! Is it really you?’
Brontë, Emily. Wuthering Heights Level 5 Oxford Bookworms Library (English Edition) (p.39). Oxford University Press. Kindle 版.
「俺を知らないのか?」と彼は聞いた。「おい、俺は部外者じゃない!」。「えっ!」と私は驚いて叫んだわ、彼が消えてからもう4年も経っていたから。「ヒースクリフ!本当にあなたなの?」
4.さいごに
この記事では、Oxford Bookworms Library版のWuthering Heights(「嵐が丘」)についてまとめました。簡易版で読みやすい英語で書かれながらも、しっかりと読み応えのある一冊でした。話の年代が前後したり、登場人物の名前が似通っていて難解になっている本作ですが、Oxford版ならその様な混乱はありませんでした。文学史に残るこの名作をとりあえず知っておきたい方や、悲劇的物語が好きな方にはおすすめです。個人的に悲劇は好みではありませんでしたが、名作に触れられて良かったです。
さいごまで記事をお読み頂きありがとうございました。
おわり
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