【書評】「日本語と日本語論」池上嘉彦著~言語の本質に迫る骨太の一冊
(2026.4.11)
本作 「日本語と日本語論」(池上嘉彦著、2007年)は、Longmanの英語辞典の監修も手掛ける言語学の大家、池上嘉彦氏による骨太の一冊です。言語学の本は最近5冊程読みましたが、本作を最もおすすめしたいです。
読了
「日本語と日本語論」池上嘉彦著(2007)
言語学の素晴らしい書籍でした。
長年英語を勉強していても知らなかったネイティブの微妙な感覚を教えてくれる💡
日本の有名文学作品の英訳を例に日本語と英語の感覚の違いを比較して説明。難しいですが外国語学習者は必読😀https://t.co/MuaeH5AyLK pic.twitter.com/OEbRvumM3b— みっちー@英語学習ブロガー (@michi1009_t) April 4, 2026
長年外国語を勉強していても誰も教えてくれなかったネイティブ話者の感覚の違いを、日本の有名文学の英訳との比較によってあぶりだしてくれます。外国語(主に英語をはじめとするインドヨーロッパ語族)を長く学んできた方であれば、「なるほど、そうだったのか!」と膝を打ってしまうような、視界が開ける様な感覚を得られるでしょう。
例えば、川端康成の「雪国」の冒頭の名文「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の英訳ですが、英訳だと主語が電車(train)になり、”The train came out of the long tunnel into the snow country.”(E. Seidensticker)という英文になります。日本語でこの文章を読んだ際には、読者が主人公と一体化して、あたかも自分が電車の中にいるかの様な没入感を感じると思います。しかし英語では全く雰囲気が異なり、電車の外から俯瞰する第三者的視点があり、まるで電車の外からカメラで撮影しているかの様な、客観的な、傍観者的な目で見て電車の動きを表現している感じになっています。ちなみにこの英訳は名訳とされているそうです。
日本語では「主語の省略」が当たり前に頻発するのに対して、英語では主語を明示する傾向が非常に強く、その傾向は日本語とは比べ物にならない程の違いを生み出しています。その違いが、「雪国」の英訳にくっきりと現れています。日本語の母語話者からすると、上記の英訳は原文の良さを表現出来ていないと感じてしまいますが、言語の違いによって、埋められない感覚の違いを生み出している好例だと思います。
その他にも松尾芭蕉の名句「古池や 蛙飛び込む 水の音」が、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)訳においてはカエルが“frogs”と複数形になっている(!?)等、興味を引くと同時に、長年勉強していても知らなかった日本語と英語の感覚の違いに衝撃を受ける事請け負いです。
英語(やその他の印欧語)を一通り学んできた中~上級学習者にぜひ読んで欲しい力作、おすすめです。
<書籍情報>
| 題名 | 日本語と日本語論 |
| 著者 | 池上 嘉彦 |
| ジャンル | 言語学、比較言語学 |
| 出版社 | ちくま学芸文庫 (ちくま学芸文庫 イ 11-2) |
| 出版年 | 2007年09月10日 |
| ページ数 | 375 |
おわり